前野巡査の1998年8月27日







すごかった。 だって車がさ・・・・。



 ・・・・・ 参議院選挙で自民党が惨敗した
そんな夏のお話。 ・・・・・

 ・・・・・
彼女が彼氏を待つ
そんな駅のお話。
・・・・・



 朝7時過ぎ。 一人の学生さんがきた。
はぁ・・・またか。






自転車盗難の被害届を出しに来た。
夏休みだからって訳じゃないけど最近は多いな。
ちゃんと鍵締めておかないと・・・ね。






今日は8月27日木曜日。

あと4日で夏休みも終わる。

お盆休みはとっくに終わっているから
街に人が戻ってきている。




 ここは、白陵大の横幅柊町キャンパスの北側に位置していて
理学部や工学部に近いせいかどうか分からないけど
駅前には飲食店が並んでいる。
でも、その裏にはごく普通の住宅街が広がっている。

最近は大した事件もないからあくびだって出ちゃうよ。
「あ〜あ・・・」



 ・・・・・


午前の北行きのラッシュが終わって9時ごろ。
そろそろ午前のパトロール。
朝の学生の自転車見つかるといいな。

まだ街の中は人が少ないかな。
この辺は住宅街で大きなお屋敷もあるし一般の住宅もある。
暑いから余り人が外に出ていない。
公園の日陰は混雑していたが。

静かな街。

今日も穏やかに一日が過ぎてくれるだろう。
・・・・と思っていた。




・・・・・

そして12時。
午前のパトロール終了
お昼食べておこう。
きょうは、ん〜と・・・カツどんかな。
やっぱり警察官は勝つドンでしょ。

出前を頼む。



出前のあんちゃん、暑そうだな。

こうご飯を食べているときも
交番には人が来るんだね。
先輩の真木巡査長はもう食事を終えて仕事をしている。

病院へ行くおばあさん。
港の見える丘公園に行くカップル。
道を尋ねる人が多い。

額を汗が流れた。

今日も暑い。日射病や熱射病になる人が出なきゃいいな。


9月に入っても暑さは残るからね。
残暑の秋。

 ・・・・・

もう14時か。

今度は真木巡査長がパトロール。

自転車は見つかるのかな。
そうそう

防犯登録証は大切に保管! これ重要。

そういえば
おふくろはいつもなくしてたっけ。

ん?はい?はぁ・・・・ちょっと待ってください。

「公園ですね。この辺だと港に見える丘公園かな?」

「いや、谷真下公園なんですけど」

 ・・・・となりの駅じゃん。


はぁ。
今のでどっと疲れた。
「とりあえずお茶飲んでっと。」
のほほん
はぁ・・平和だ・・・・。


 ・・・・・



 ブルルルルルル
キキィ――――!!
ドンッ    ガシャッッッッ!!




何だ?
慌てて交番の外に飛び出る。


駅前のベンチをなぎ倒して一台のセダンが止まっている。
なんだぁ?
するとその車の運転手、さらにアクセルを踏み込んだ。



キキィ――――!!
ガ―――――!!   ドシンッ


さいごに
駅前のモニュメントの壁のまえの待ち合わせの列に突っ込んで
壁に激突して止まった。





ボーっとしてられない。
救急車だっっ!!
無線をベルトからはずして連絡。




「ひ、柊町駅前交番の前野巡査から本部へ、本部、お、お願いします。」



 だめだっ
声が震える。



 「はい?本部。どうした?」

返事までが長く感じる。

「柊町駅前で乗用車・・・え〜、セダンタイプの乗用車が一台暴走中」



暴走中っていうのは変な言い回しだ。
実際はもう止まっているんだから。



「至急、応援と救急車を要請したい、どうぞ」



「本部了解。え〜、近くにいる橘12と橘9は至急現場へ、救急車は・・・え〜今、 すでに向かっている・・・。」


「柊町駅前、了解」


もう救急車がでているって事は
ここにいる野次馬の誰かがかけてくれたんだ。

あぁたしかに。・・・救急車の音がしてきた。



あっ。

 野次馬を近づけないようにしないと。

真木巡査長が帰ってくるまで 救急車が来るまで 応援が来るまで

自分ひとりで・・・。




救急車のサイレンと野次馬の騒ぐ声。



 「下がってください!救急車の邪魔になります!下がってください!!」



 ・・・・・





 ・・・・・
参議院選挙で自民党が惨敗した
そんな夏のお話。
・・・・・




 ・・・・・
彼女が彼氏を待つ
そんな駅のお話。
・・・・・




 ・・・・・
一人の女の子が永い眠りについた
そんな夏のお話。
・・・・・




 ・・・・それから
三年間・・・・
ギャラリ〜へ