ありふれた日常〜学校 |
「ねえ、孝之くん、起きて」 「おい、孝之、早く起きろよ」 「孝之、いつまで寝てんのよ!!」 ガツンッ! 「おわっ、なんだあ?」 突然襲った衝撃に、目を上げると、遙・慎二・速瀬が俺の机を取り囲んでいる。 なんだか3人そろって呆れ顔のようだが、気のせいか? 人が寝ている机を、力一杯蹴りとばすような奴は、速瀬しかいないので とりあえず文句つけてみる。 「速瀬!俺の眠りを妨げるとは、一体どういうつもりだあ?」 「あたしに文句言う前に、周り、よく見たほうがいいと思うよ」 「あ、周り?」 首をめぐらせて見ると、あちこちで机がくっつけられて小グループができている。 その上には色とりどりの弁当箱やコンビニ袋。 どうやら、寝ている間に4時間目が終わっていたらしい。 よく見れば3人とも昼食持参だ。 「よーし、それじゃいつものとこ行こうぜ」 弁当持って歩き出した俺の後ろで、慎二の声が聞こえた。 「終わりの礼まで、無視して寝続けるとは。あれで、同じ受験生だって言うんだから、 信じられないよな」 カエスコトバモアリマセン・・・ 2学期になると、遙は昼休みに俺たちのクラスへ来るようになった。 時には、お手製弁当も持ってきてくれる。嬉しい反面、照れくさくもあって、 4人で屋上へ行くことが多くなった。本当なら、丘まで行って ピクニック気分を味わいたいところだが、ちょっと遠いんだよな。 「そういや、孝之、昨日実力テストの結果、返ってきただろ。どうだった?」 「よくぞ聞いてくれました、慎二くん。白陵大で合格判定Bプラス取ったぞ」 「ほんとー? 孝之くん、すごいっ! 夏休み中、ずっとがんばったもんね」 とても嬉しそうな笑顔で、遙が喜んでくれた。 その笑顔が見られるなら、俺はもっとがんばれるさ。 「『休み明けの実力テストはかなりやれると思う』なんて大見得切ってたから、 どうなるかと思ったけど、孝之もやるわねえ。確か、前のテストじゃ Cマイナスだったもんね」 「どうだ速瀬、恐れ入ったか」 「何言ってんの。今までぜーんぜんやってなかったから、効果がすぐに出ただけでしょ。それに、遙と慎二くんは当然Aプラスなんだから、もっとがんばんないと追いつくどころか、引き離されるだけよ」 ぐはっ、何てこと言いやがる。俺のささやかな達成感を粉砕しやがって。 「でも、孝之はほんとよくやってるよ。やっとやる気がでてきたんだし。 このままいけば、白陵大で、また一緒にバカやれるさ」 さすが慎二、ナイスフォロー! 「そういう速瀬は、どうなんだ?」 「あたし?ご心配なく。次の記録会には、推薦先の水泳部監督も見に来るからね。 バッチリいいとこ見せて、目指せ、オリンピック!」 普段はあまり気にしないけど、こう言った話を聞くと、改めて速瀬の凄さが分かる。 マジでオリンピック狙ってほしいぞ。 「慎二、今日はどうする?」 昼休みが終わり、教室へ戻りながら、慎二に聞いた。 「えーっと、わりぃ。今日も予備校だわ」 「わかった。じゃ、遙、また放課後な」 「うん、またあとでね」 そう言って、遙はB組へ入っていった。 「毎日、よく続くわね」 速瀬が感心したように言った。 「速瀬だって毎日泳ぐだろ。それと同じさ。もう習慣になってるとこあるし」 「1学期の孝之からは想像もできないな。毎日、勉強するなんて」 これも夏休み明けから始めたことだが、遙と学校帰りに一緒に勉強している。 予備校が休みのときは、慎二も加わる。 場所は、学校の図書室だったり、柊町図書館だったりと、まあいろいろ。 最初の頃は、この俺が、図書室で勉強なぞしていると、3年の図書委員が、 珍獣を発見したみたいに驚いてた。 「さて、あと2時間がんばりますか」 席に座りながら、ぼそっとつぶやいた瞬間、教室の反対側から、速瀬のツッコミが 飛んできた。 「居眠り以外でがんばってね〜 孝之が眠ると、眠りキノコが飛んでくるから〜」 遠距離攻撃はやめろ。って言うか、なぜ聞こえる?おまけに眠りキノコってなに? 俺の疑問をよそに、先生が入ってきて、5時間目が始まった。 2学期になってから思うのは、俺たち4人の歯車がうまくかみあってるなってこと。 それぞれが目標を持ち、お互いに助け合いながら努力し、その成果もちゃんと出てる。 この仲間の結びつきは強いよな。俺も今、自分にできることを一生懸命やろう。 それが、遙の笑顔になり、仲間を強くするから。 fin ================================================================================ 無事終わった夏休み、そして始まる2学期。 書いてる本人が、その光景を見たくて、SSにしてみました。 ご感想、ご指摘などいただけると、とても嬉しいです。 |
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