Make your own free website on Tripod.com
ありふれたLove story (後編)

 ザー・・・

いつのまにか雨が降り出していた。

雨音がそっと響く。
今日あったいろんなこと・・・洗い流してくれればいいのに・・・

壁に掛けてある時計は0時を指していた。
暗い部屋でひとりベッドのシーツを泳ぐ――
息が詰まる。
なんでこんなに苦しいんだろ。

携帯を見る―――着信0件

いくつもの言葉が宙をぐるぐる回って消えた。

吹っ切るように目を閉じた。


―――カーテンの隙間からの白い光で目が覚めた。
ぐっと窓を開ける。
部屋に雨の匂いがまだする湿った風が入ってきた。
雨は昨日の夜のうちにやんだみたい。
空は少しくすんでいた。
昨日はあんまり眠れなかった。
朝練にでる気は起きなかったけど・・・
体を動かせば気も紛れるのではないかと思い、家をでた。


電車の車窓から見える景色を眺めていた。
流れる街並みをただ呆然と見る。
雨のせいもあって車内はいつもより混んでいた。
電車の中吊り広告には昨日と同じ映画の広告。
その広告を見て少し憂鬱になった。
また外の景色に目をやった。
くすんだ空を眺めてそれが今の自分に重ねあってるような―――そんな気がした。


「ふぅ・・・」
今日もう何度目かのため息をつく。
体を動かせば少しは気が紛れると思ったけれどそうでもなかった。
授業もただ黒板を眺めていた。
私は3年生なので部活の方は夏のインターハイで事実上引退していた。
ただ私はすでに進路が決まっているので、自主的に練習には顔を出していた。
ただ今日は練習に全然身が入らない。
私は早々に午後練は切り上げる事にして学校をでた。
長い坂道を下り駅に向かう。
下校時刻から少し外れた時間なので歩いている生徒の数はまばらだ。
前を並んで歩く制服の恋人たちの影が傾いて伸びてゆく。
その姿を見て少し羨んだ。
駅で改札口をぬけようと定期を通そうとしたとき人影に気づいた。

鳴海さんだ―――

鳴海さんは昨日あったときと同じ格好していた。
「・・・待ってた。これから時間ある?」
「うん・・・」
私はコクリと頷いた。
どうしよ・・・私少し変な顔してるかもしれない。
鳴海さんを見つけたとき嬉しかったけど、同時にどうしていいかわからなかった。
結局何もいえぬまま二人で鳴海さんの家の方に向かって歩いていた。
あたりはすっかり暗くなっている。
さっきまで見えた街路樹の影も見えなくなっていた。
「これ二人で食べようと思ってさ・・・」
先に口を開いたのは鳴海さんだった。
「うん・・・」
手にはアイスクリーム屋さんのビニール袋があった。
この間TVの「ウワサのお店」で紹介されていたお店のロゴがはいってる。
「・・・昨日はゴメン」
「そんな!私が怒って帰っちゃったのに」
「ガッカリさせちゃってさ・・・」
「そんなこと・・・」
「だからさ・・・今度またやり直そう。デート」
その言葉に胸がいっぱいになる。
でも暗くて鳴海さんの表情はよく見えない。
どんな表情なのか見たかったけど、自分の今の気持ちを見透かされるのが恥ずかしい気がして目を伏せた―――


しんと静まりかえった鳴海さんの部屋に辿りついたのはすぐだった。
鳴海さんは明かりをつけようと手探りでスイッチを探してる。
部屋は真っ暗だった。
「紐の方だった。チョット待って・・・」
靴を脱いで部屋に上がる。
「おっと・・・」
ゴンっという音がした。積んであった本に躓いたらしい。
バタッと床に倒れる音がした。
「大丈夫ですか?鳴海さん」
ちょっと心配になり声を掛ける。
「・・・」
返事がない。
「?」
部屋に上がり紐を引っ張り明かりをつける。
「!!。ちょっと鳴海さん!?」
倒れてる鳴海さんを見てビックリした。

―――顔が真っ青だったのだ。

「ん・・・アレ?」
鳴海さんは少し気を失ったのに気づいてないみたいだった。
「鳴海さん・・・」
「大丈夫。ちょっと貧血・・・だよ・・・」
ヨロヨロと体を起こしながらそういった。
「・・・とても大丈夫そうに見えないです」
「大丈夫だって。ほら、このとーり。アレ?」
鳴海さんは立ち上がろうとしたが立てなかった。
平静を装おうとしているけど、かなり辛そうだった。
私は鳴海さんの肩に手をまわしベッドにつれてった。
「寝てください」
鳴海さんの体をベッドに横にさせる
「・・・ゴメン」
少し擦れた声で申し訳なさそうに言う。
「これからのバイト、休みの電話入れますよ」
「ちょっと待って・・・」
「お願いですから休んでください。」
掛け布団を体に掛けながらいった。
「・・・わかった」
そういってまもなくすぅすぅと寝息を立て始めた。


「もしもしすかいてんぷるでございます」
渋めの年配の男の人の声だった。
「すいません鳴海ですけど・・・」
事情を説明した。
「そうですか・・・仕方ありませんね。最近夜のシフトの方がひとりやめられてしまいましてここ最近かなりの無理をさせてしまいましたから・・・」
「昨日も夕方4時まで18時間続けてもらう形になってしまいましたし・・・今日も午前0時から夕方4時までやってもらいましたし・・・」
「わかりました。鳴海さんによろしくお伝えください」
「わかりました。ありがとうございます」
お礼をいい電話を切る。
ベッドのほうに目をやると鳴海さんはスースーと気持ちよさそうに寝息をたてていた。

鳴海さん・・・私に合わせようとかなり無理していたんだ。

昨日映画館で・・・寝てたのも・・・そのせいだったんだ―――

床に投げ出されているアイスクリーム。ドライアイスのおかげでまだ溶けてはいない。
アイスを取り出し冷蔵庫に入れる。

これ買うのにも無理したんだろうな・・・

服が同じなのはたぶんこれを買うせいだったんだろう。
バイト終わってその足でお店いったんだ。疲れた体をおして・・・

ベッドの横に腰掛け、指で鳴海さんの前髪をかき上げおでこに手をやる。
スースーと寝息を立てる鳴海さんを見つめる。

私のために―――相当無理してたんだ・・・鳴海さん。

涙があふれていた―――

「ふぅ・・・」

思わずため息が漏れる。

「バカなんだから・・・」

そうつぶやきながら私はおでこそっとキスをした。

じっとこうしてたい―――

これからも鳴海さんとずっと二人でいっしょにいたい。

いつもいっしょにいたい。

そう思いながら顔をそっと離した。


窓をあけると涼しい風が入ってきた。
カーテンがヒラヒラと舞う。
空を見上げると星が降るようだった。
明日はきっと晴れるだろう・・・
私は少し笑った―――


ギャラリ〜へ